2016年05月15日

世紀の空売り、面白かった箇所の紹介など


世紀の空売りを読みました

サブプライムローン・バブルの破綻に賭け、大儲けした人々の話。

いかにも痛快な話かと思えば、やはり逆張りで儲けるのは(儲からない時も、儲かった時も)苦しいよね、

という読後感だった。



サブプライムローンとはなにで、なぜそれが極めて危険な商品だったか

サブプライムローンから派生したCDS・CDOが、サブプライムローンに関連する投機的な投資額をいかに大きく膨らませたか

なぜそのような危険な廃棄物の詰め合わせが格付け機関からAAA(最高位)の格付けを得られたのか

サブプライムローンに巨額の投資を行った米保険会社AIGは、なぜサブプライムローンに投資をしたのか


といった、リーマンショックにまつわる概要・疑問点をすんなりと(ストーリーの中で)理解することができる本だと思います。


本筋についてのレビューや解説はもう俺が解説するまでもないほど、解説があると思うので、個人的に気に入った相場に対する格言・考え方だけを紹介します。


「サブプライムローンの空売りで大儲けした、バーリのむかつき投資」

株式投資家時代に実践した「むかつき投資」(吐き気がしそうな株に分析的な関心を注ぐ)

「詐欺や不正に関する報道を探す気はありませんでした。それだと、後追いになるでしょう。わたしは何かの先に立ちたかった。訴訟関係で、投資上の仮設につながりそうな情報を求めていたんです。裁判所で認められた弁論、認められた答弁、認められた和解を、検索しました」

アヴァントという、その後に経営陣が逮捕されるようなクソ株だったが、「事業の根幹にかかわるような裁判で、アヴァントの意見が認められた」という報道をバーリは発見。

アヴァントは極めてディスカウントされていたため、バーリはその後の株価回復で大儲けした。

バーリはこれがバリュー投資の本質だと思っていた。十倍に跳ね上がるけど、その前にまず半分に下がる。

バリュー投資とは、世の趨勢に異を唱えることだ。



「株式市場と債券市場」

株式市場から債券市場に鞍替えした投資家は、捕食獣のいない島で育って、大蛇だらけの穴倉に投げ入れられた柔毛の小動物みたいなものだ。

株式市場では市場全体の取引が画面に映し出され、透明性が高いだけでなく当局の目が厳しく光っている。

債券市場のほうは、おもに大口の機関投資家によって成り立っていたので、株式市場のような大衆型の政治的圧力にはさらされなかった。


→個人は個別社債投資を絶対にするべきではない理由として、肝に銘じるべきだと思う。

株は、市場でついている値段だけど、債券は市場でついている値段ではない。



「非公開株事業と公開株市場」

非公開株事業(上場していない株のM&Aなど)に携わる間、空売り屋のチャーリーはあることに気がついた。

非公開株の市場は公開株市場よりも効率性が高い。


「非公開株の取引では、たいてい、両方の側に熟練したアドバイザーがいます。ものの価値を知らない人間の入り込む余地はない。

一方で公開株市場の人間は営業基盤よりも四半期の利益に重きを置いたりします。

ありとあらゆる常識外の理由にもとづいて行動する人たちがいます。」

さらに、アメリカの株式市場にいる人は、アメリカの中だけで判断するなど、狭い部門の中だけで判断をする人が多いことにも気がついた。



「ブラックショールズ方程式の盲点と、長期間にわたるボラティリティの軽視」

LEAPS(長期株式予測証券)の買い手は、長期間の株価推移が、現実に起こりうるよりも狭く予想されていることにつけこんで儲けるチャンスがある。

ブラックショールズ方程式は株価推移が正規分布であることを見込んでおり、将来の株価は横ばいである確率が最も高いと考えられている。

一方で、(シャープや三菱自動車のように)株価が倍になるか・0になるか、というような状況が起きている会社では、横ばいになることは考えられない。

ブラックショールズで計算されるオプションが、実際よりも安すぎることがありうるのだ。

市場は本質的に不確実性、とくに長期の将来の不確実性を軽視しているが、金融市場は本質的に不連続で無秩序な場所で、そこが収益源になりうる。

サブプライムは破綻するわけがないと思われていたため、その保証は2%で買うことができた。



「債券市場のネーミングセンス」

債券市場の用語は、意味を正確に伝えるよりはむしろ騙すようにできている。

過大評価された債券を割高とは呼ばず、高級とよんで、購買欲をそそるようにしている。

サブプライム債の階層は、階層ではなく、トランシュと呼ばれていた。

最下部のトランシュ(クズ)、つまり危険な一階は、一階ではなく、中二階と呼ばれていた。




「破綻したAIGグループは、なぜサブプライムローンにどっぷり漬かったのか」

元々は、銀行相手に投資適格な上場企業の債務(借金の返済)を保証する保険を売っていた。

上場企業が全部いっぺんに破産するとは考えにくいため、多くの上場企業の債務保証の保険を売ることで、

保険料を手に入れつつ、破産のリスクは分散させることができた。

2001年にはAIGグループの収益の15%を占めていた。


しかし2段階のすり替えで、これはサブプライムローンに変わってしまった。

まず、上場企業の債務から、多種多様な債務の山、クレジットカードの債務、自動車ローンなどなど、

そういったローンに保険を提供するようになっていった。


次に、サブプライムローンという、返済率の低いローンの山をお化粧してAAA格付けにした商品に保険を提供するようになっていった。

社内ではそれがそれまで引き受けていた商品とほとんど変わらないリスクで(よく分散されている)保険料のプレミアムが稼げるものと考えていたが、大きな誤りだった。

なんとサブプライム債券に対する保証を、年間たったの0.12%で売りに出していたのだった。


サブプライム債券に対する保証を買ったのが、この話に登場する、「空売り屋」たちだった。

彼らはサブプライム債券を持っていないので、サブプライム債券が破綻しても困るわけではなく、大きな収益を上げることができた。


一方でサブプライムローンへの投資は、(規制の厳しい)銀行でない会社で、

巨大なバランスシートを持っている会社で、かつ信用力の高い(トリプルA)の会社であれば

どこでもその受け皿になる可能性があった。

バークシャー・ハサウェイだろうと、ゼネラル・エレクトリックだろうと、どこがその役を引き受けてもおかしくなかった。

たまたま先陣を切ったのがAIGだったというだけの話だ。



「サブプライム債への保証(CDS、CDO)」

保証という概念を持ち出すことで、実際に住宅ローンを借りている人(サブプライム)の数は増えなくても、

その返済に対して賭け事を行う総額がどんどん大きくなる。

AIGがいくらでもサブプライムローンへの保証を出してくれる(実質的にサブプライムローンの買い手になってくれる)ので、

市場ではサブプライムローンへの保証を買いたがる(サブプライムローンの破綻に賭ける)人が少なく、

「空売り屋」たちは貴重な買い手として重宝された。


「格付け機関のザル審査」

ローン借り手は300〜850点の中で審査されるが、プール全体の平均点が650点以上であれば格付け機関はAAAを出した。

全員が650点であることと、850点と450点の人が半々でいることはまったく違う(450点の債務者が返済できる期待は極めて薄い)のだが、こうしたザル審査がまかり通っており、

投資銀行からはナメられ、チョロまかされていた。

posted by ロボたいしょう at 11:14 | Comment(3) | 読書・書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする