2016年04月03日

『ビッグデータ・ベースボール』書評


ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法


マネー・ボールに続く、新時代の野球観を表現した本。
日本でもマネー・ボールのようにブームを起こすかも?

honzのレビューが良く書けています。
http://honz.jp/articles/-/42549
ヒューマンドラマ的な描写も多いのですが、あくまで野球の面で絞って感想を書きたいと思います。


あらすじ
ピッツバーグ・パイレーツは、チーム総年俸もメジャーで下から数えた方が早く、20年連続負け越しの弱小球団だった。
監督もGMも更迭寸前だったので、起死回生のため、ビッグデータを活用した新たな戦術を取ることにした。
それが上手くはまって、ナリーグ地区シリーズに進出しました。

というお話。

ビッグデータを利用した新たな戦略とは・・・
PITCH f/xや、トラックマン社による打球追跡レーダーシステムの発展により、今まではほとんど未知であった、投球や守備についての膨大なデータが得られるようになった。
この新たなデータを活かして、今までの概念を覆すような3つの作戦を敷く。

作戦1 極端な守備シフト
打者のゴロ打球は、引っ張りになる(自分が立っているサイドに飛ぶ)確率が高い。
フライの40%が引っ張り方向なのに対し、ゴロの73%が引っ張り方向なのだそうだ。
特に、左打者(ホームベースの右側に立っている打者)は右側(一二塁間)に打球が飛ぶ確率が高い。
相手の打者が、『引っ張り』を得意とする強打者の時には、セカンド・ショートの両方が片側に寄るほど、極端な守備シフトを敷くことで、守備でアウトを稼げる。
(日本ではまさに王シフトと呼ばれるシフトがありましたが、それを大々的にやろうということです)

2011年に最も多く極端な守備シフトを引いたレイズは、216回の守備シフトを敷いたが、守備で稼いだ点数はなんと85点(9勝分に相当)だったという。

メジャーでは守備シフトが爆発的に普及してきており、2012年から2014年の間でなんと3倍にも増えているのだという。2014年で最も多く守備シフトを敷いたアストロズは、なんと1341回も守備シフトを敷いた。
守備が高度化された結果、メジャー全体で打率が低下しており、2013年のメジャー全体の打率は.253と、1972年以降で最も低い数字になった。

ただし、この作戦はガラ空きになっているサイドに安打を打たれると、ボコボコに批判されやすいので、実際に運用するにはチームの中での作戦に対する強い信頼感が無いと難しい。


作戦2 ピッチフレーミング
要するにミットずらし。
PITCH f/xによって、実際の球の軌道と、審判の判定がどれだけ食い違っているかが分かるようになったが、
一部の捕手は安定的に球の軌道がボールでも、ストライク判定に見せることが上手である(逆に捕球が下手でボール判定になっている選手もいる)。
ボールっぽい球でも、ミットを自然にストライクゾーンに巻き込む動きの中で取ることで、さもストライクであるかのように見せたり、変化球が外に外れる前に取ったり、中に入ってから取ったり、するらしい。
この捕球の上手さ(ピッチフレーミング)については、その価値が考えられたことはほとんど無かったが、
実はシーズン当たり20点(2勝分に相当)以上、平均から失点を防いでいる(ボールをストライクに見せている)捕手が居て、能力にはシーズンごとの再現性も高いことが分かった。

新たにパイレーツがFAで獲得したラッセル・マーティンは、打撃こそ微妙だったが、ピッチフレーミングで20点〜30点を稼いでいる選手で、パイレーツがなけなしの金をはたいて2年17億円で獲得するに相応しい価値を持っている選手だった。
(それまでの捕手ではピッチフレーミングで10点以上失っていたので、この捕手獲得で4勝分を得られたことになる)

さらに、ピッチフレーミングを使って、コントロールが悪い速球投手を再生できることに、パイレーツは目を付けた。
フランシスコ・リリアーノという、ノーコン速球ピッチャーをパイレーツは2年14億円で契約(後に出来高払いへ変更)
リリアーノはピッチフレーミングが下手な捕手と組まされていたせいで成績がより悪く見えていたので、マーティンと組ませることで成績を改善でき、速球もより活かせると判断された。


作戦3 ツーシームでゴロを打たせる
守備シフトは相手のゴロに対して特に効果が高い。(外野は内野に比べて極端な守備シフトがしづらく、また打球の行方も予測しづらい)
よって、ガチガチの守備シフトを引いた上で、ツーシームを投げて相手にゴロを打たせることで、一番効率良くアウトを稼ぐことが出来る(!)
さらに、内角攻めも相手に心理的な影響を与え、外角の球に踏み込みにくくさせる効果があるので、ゴロを増やす効果があることが分かった。
ゴロは絶対にホームランにならない(!)ので、ゴロをひたすら打たせて守備で取る作戦は、理に適っているといえる。
パイレーツの守備防御点は、2012年のマイナス25点から、2013年のプラス68点と、93点向上し、守備だけでチームは9勝分を上積みすることが出来たのだ。


PITCH f/xによって新たに分かった、
守備シフト・ピッチフレーミング・あへあへツーシーム投げ
の3つの作戦で、20年連続負け越しパイレーツは、ナリーグのプレーオフに進出しました。
というお話でした。


これらの戦略に対する新たな戦略
もちろん、これらの戦略に黙ってやられ続ける他球団ではない。
マネーボールで知られる、アスレチックスは、
ゴロを打たされるなら、最初からフライが多い打者を集めればいいじゃない
という作戦を実行し、打球のフライ割合が60%となった。(次にフライ割合が高かった球団は、39%)
ゴロを打たせるピッチャーに対し、フライを打つバッターの相性も良いということが分かり、この作戦は次に流行しそうである。

さらに、ピッチフレーミングが審判に知られるにつれ、ピッチフレーミングが上手いキャッシャーを、審判が警戒するようになった(騙されないぞ!)という効果も見られているらしい。

日本では、まだこうした守備革命は全く始まってすらいないと思う。
しかしマネー・ボール的な選手の在庫管理システム(BOSシステム)をいち早く導入した日ハムが、メジャー流の守備・投球戦略をいち早く取って、思わぬ番狂わせをしてくれるようになったら、うれしいなぁ
と思う私であった。。


posted by ロボたいしょう at 18:36 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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