2016年05月24日

科学哲学への招待、読みました(後編)

ニュートンによって完成されたと思われた科学(ラプラスの悪魔)だが、
実は様々な問題があったよね、という話が後編。



運動方程式ですべてが記述できる世界か?

4.ラプラスの悪魔と科学の危機→現代科学の発展

すべての物体の運動は、運動方程式によって完璧に説明できるのであれば、
われわれ(を構成する原子)の行動すべても運動方程式によって説明される。
つまり、ある時点での宇宙のすべての状態をスーパーコンピューター(ラプラスの悪魔)にインプットし、計算させれば過去・現在・未来のすべてを完璧に知ることができるのではないか?
→そうともいえない例が数学と物理学でそれぞれ2つ登場

数学の危機
1.非ユークリッド幾何学
5つの公理に基づいて厳密な議論を積み上げることで多くの事柄を証明しつづけたユークリッド幾何学は、学問のお手本、理想形とされてきた。
(たとえば、三角形の内角の和は180度である、など)
しかし、球面に三角形を描けば、別に内角の和が180度じゃなくても矛盾しなくね?
ということが発覚し、数学的に完璧な理論(真理)にはこれ以上議論の余地がない、と思われていたものも崩壊する可能性があることが判明した。
→ゲーデルの不完全性定理へ

2.集合論のパラドックス(ラッセル)
すべてのクレタ人はうそつきだ、とクレタ人が言った
のような自己言及によって、数学の根幹をなす集合論には決定的な矛盾があることが判明した。

それぞれに数学を大きく発展させる結果に。


物理学の危機
1.光速度が慣性系によらず一定である。
時速300キロの新幹線の中で、100キロでボールを投げると、ボールの速さは400キロになる。(ニュートン力学)
しかし光ではその様なことがおきない。光の速さはどこでも一定である。これはいったいなぜなのか?

→アインシュタインが相対性理論で説明(相対性原理と光速度不変の原理)
(ニュートン力学は限られた条件下で、物体の運動をそこそこうまく説明できている理論に過ぎなかった!)

2.熱などのエネルギーは、連続量をとらないのではないか?
→物質のエネルギーについては、最小の目盛り(量子)が存在していて、その整数倍の値しかとることができない。その間の値を取ることができない。
→この発見をきっかけとして、量子力学の発展

→ハイゼンベルク「不確定性原理」
(超ミクロの世界では物体の位置と物体の運動量を同時に決定することは出来ない。物体の位置については、ある場所に存在する確率でしか言及することが出来ない。)

量子力学によって、ラプラスの悪魔(初期状態をすべて入れることで世界が完全に予測できる)は死んだ!

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5.科学哲学の誕生
こうした科学の危機を経て、科学についてもっと考えようという風潮が生まれた。
また、ラッセルやウィトゲンシュタインの研究結果の影響を受けて、
ウィーン学団と呼ばれる集団が誕生し、論理実証主義(ぼくのかんがえたさいきょうの科学)を唱えた。

論理実証主義の柱・2つ

1.検証できない形而上学を滅ぼすことで完璧な科学を作る
意味のある科学的命題・・・検証(確かめること)が可能である
意味の無い形而上的命題・・・検証不可能である(神は万能である、魂は不死である)

2.統一科学
社会学は、人間についての性質が完璧に解明できれば、社会学なしでも説明が出来るようになる。
つまり、心理学があれば十分だ。
しかし心理学は生理学によって説明され、生理学は化学によって、化学は物理学によって説明される(還元主義)。
よって物理学があればすべての人文科学は十分に説明できるようになるはずだ。

→結局どっちもぜんぜんだめ。
すべてのAはBであるという科学的法則について、無限に存在するすべてのAを検証することなんか出来ない。
統一科学についてもぜんぜん説明できてない!(今の物理学で社会学が記述できるわけがない、わらい)


6.論理実証主義の敗北

6-1.カール=ポパー 「反証可能性」
すべての理論を「実証」することなんか到底不可能だよ、
「反証」出来る可能性が高ければ高いほど(そして反証されないほど)、科学的な言説といえるよ。

神は万能だ→これどうやって反証するの?科学じゃないよ
明日は雨が降るか、降らないかのどちらかだ→反証できない(常に正しい)ので、何の価値もない
マルクスの経済理論やフロイトの夢診断→反証できない(いろいろ屁理屈をこねて正当化する)ので、科学じゃないよ
光は重力の影響で曲がる(アインシュタイン)→重力を受けても曲がらない例を示せば簡単に反論できる

ダーウィンの進化論→反証することが出来ない(将来について予測しない)ので、これは科学ではなく、形而上学だ。しかし、この発想は科学的理論の発展のあり方について(出来の悪い理論は自然淘汰され、よい理論が残っていく)、あるべき姿を示している。


6-2.トマス=クーン「パラダイムシフト」
アリストテレス世界観→ニュートン力学→アインシュタイン物理学
のように、科学研究は時代とともに大きくパラダイムが移り変わっていく。
あるパラダイム(大きな枠組み)の中では、理論が成熟していって科学は右肩上がりに発展する。
しかし説明できない事柄が積み重なっていくと、それらを説明する新たなパラダイムが登場し、
古いパラダイムとの間では激しい争いがあった末に、新しいパラダイムへとシフトしていく。

科学は、時代とその時代の持つパラダイムと無関係に発展しているのではなく、
時代の状況(パラダイム)が社会的影響を科学に与えているのである。

論理実証主義は大した成果が出せずに終了。


7.科学社会学
トマスクーンが言うように、科学が社会的な影響を受けるのであれば、数学法則も社会的な影響を受けているのではないか?
→科学って宗教とおんなじ程度にしか信頼度ないよね?
→時代や社会が変われば、数学の理論や科学知識もぜんぜん変わっちゃうんじゃないの?不変の真理だなんて、とても言えないんじゃないの?
というようなラディカルな主張(相対主義)も登場。
カルチュラル=スタディーズと呼ばれる人文科学系の一派が科学批判で大暴れした。

→アラン=ソーカル(物理学者)がでたらめな偽論文を科学社会学系の雑誌に投稿し、それが採用された。(お前ら偉そうに批判してる割にぜんぜん何にもわかってないじゃん、わら)
科学社会学者が科学について何もわかっていないのに、科学批判を行っていることを浮き彫りにした。


こんな感じ。
ニュートン(ラプラスの悪魔)と、科学の危機というテーマ、
そして、その後の論理実証主義(ぼくのかんがえたさいきょうのかがく)と、そこからの否定
の下りは面白いですね。
アラン=ソーカルの一件は、橘明氏もたびたび指摘しているように、人文科学に致命的なダメージを与えたのかなぁと思いますね。


posted by ロボたいしょう at 21:47 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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